建物の塗装に使われる塗料は、最新の技術により常に進化しています。それにより、塗料で出来る事がとても増えていて、塗り替えをすることで以前よりも涼しく、暖かい、また汚れにくい建物にする事が塗料の選択次第で可能になりました。
近年の塗料は、耐用年数や汚れにくく基本性能の向上、断熱や遮熱機能の追加、現状の性能に求められるものが年々高くなり、各製造メーカーはそれに見合った塗料を出してきました。
なので、良くも悪くも現在の塗料は何でも出来るような万能のイメージさえついています。
業者によってはそれを利用して、「現在の塗料を使えば、高機能ですから解決できます!」と言いきってしまうことがあります。
最新の塗料であっても
建物の問題がすべて塗り替えで
解決できるわけではありません。
塗装をすることで、現状の問題点を解決出来ることも多くはなってきています。しかし、全ての問題を解決できるわけではないので、ここでは塗装で出来ること出来ないことをご紹介していきます。
建物の屋根や外壁は基本的に、表面を保護する為に塗装をして、塗膜が造られます。
この塗膜が雨水の侵入を屋根材や外壁材から防いでいます。しかし、この塗膜は時間が経つにつれ、劣化しますのでやがては雨水などが侵入してしまいます。
この防水性能が低下してきた時に、塗り替えをすることで、水の染み込みを防ぐことが出来ます。
防水性能が低下してくる時期になると、建物に汚れが付着しやすくなり、それが目立ちやすくなります。
また、防水性能が低下することで建物に苔や藻、カビの繁殖がしやすくなるので、これらも汚れが目立つ要因になります。
塗り替えの際は、これらの汚れを洗い流してから行うことで、建物を新築時の様な美観へ回復させることが出来ます。
塗料にはほとんどの物に、苔や藻、カビを防ぐための薬剤が配合されており、基本的な性能になっています。
その効果は、塗料により高いものと普通のものに分かれていて環境によりますが数年で再発してしまうものと、それ以上に発生を防ぐものがあります。
塗装の元々の目的である美観の維持を現在では、これを長持ちさせる為の低汚染塗料が流通してきています。
さらに、夏場の室内が温度上昇をやわらげる遮熱塗料、各季節の室内温度を一定にしてくれる断熱塗料も発売されています。近年の塗り替えは快適生活をサポートすることが出来るようになってきています。
製造をするメーカーや塗料によりますが「超低汚染塗料」や「防汚塗料」のようにさまざまな呼ばれ方がある塗料のことです。
基本的な性能に汚れが付きにくく、親水性の塗料を使っているため、降雨により汚れが洗い流される仕組みになっています。
建物の汚れの一部には塗膜を劣化させるものもありますので、それを洗い流すことで美観を長く保つことができます。
太陽光が屋根や外壁にあたると、太陽光の中にある紫外線を吸収することで建物の表面温度が上がり、表面温度が上がるとそれは室内にも伝わりますので、室内の温度も上がります。
遮熱塗料は温度上昇の原因である紫外線を効率よく反射することで、屋根や外壁の表面温度が上がることを防ぐことで、室内への伝わってしまう熱も減るので、その結果として室内の温度上昇を防ぐことが出来ます。
具体的には、夏場の室内の温度を最大で3℃程下げる事が出来ます。
前述のとおり、建物に太陽光が当たることで、表面温度が上がってしまいます。断熱塗料は、熱の伝導率をゆっくりにすることで室内の温度を一定にします。
例えば、金属などは熱を伝えやすいため、フライパンなどに使われますが、それに対し陶器などは熱を伝えずらく、マグカップは沸騰したお湯を入れたとしても、取っ手まで熱が行かないため熱さを感じません。
もちろん、お湯がいつまでも熱いままの場合はいずれ取っ手まで熱くなりますが、外部からのエネルギーがない限り、時間が経てば冷めてしまうため、伝わる熱もすくなりますので手で取っ手を掴んでいる事が出来ます。
この仕組みを応用したのが断熱塗料になります。断熱塗料にはほとんどのものに、陶器の主成分であるセラミックが含まれています。
塗料に使用されている顔料の酸化チタンには光が当たるとさまざまな物質を分解するOHラジカルを発生させる性質があります。
水素Hと酸素OからなるOHラジカルには、強い酸化力を持っていてさまざまなものと結びつき、分解してまいます。
このラジカルが、塗膜を劣化する大きな原因のひとつになります。
この仕組みを応用したのが光触媒塗料になり、これは塗膜ではなく空気中の有害物資と結びつくことで、それらを分解して無害にする事が出来ます。
建物を塗り替える目的は「屋根材や外壁材の防水性を保ち、保護することで美観を維持すること」です。その他には前述でご紹介した快適生活をサポートする事なので、これら以外の目的は当然のことですが実現することは出来ません。
良くある営業のトークで「屋根や外壁塗装をすれば、雨漏りはなくなりますよー!」といったものがあります。
塗装には、防水性を保つという目的はありますが屋根材や外壁材についてであり、建物全体のことではありません。
雨漏りは違う建材同士の取り合い(繋ぎ目や接合部)部分からの雨水が浸入が原因になることがほとんどなので、屋根材や外壁材単体の防水性能を高めても、雨漏りの根本的な解決にはなりません。
当然ですが、雨漏りの原因を解決しない限り、雨漏りは止まりません。屋根材、外壁材に原因がある場合、その補修は塗装工事とは別の工程や工事となります。
0.3mm未満のヘアクラック(比較的小さいひび)程度の場合、弾性塗料で塗りつぶすことは可能ですが、それ以上の場合、出来てしまった隙間に専用の樹脂などを充填しないと、さまざまな問題が起こります。
隙間が0.3mm以上の場合は、表面が塗料で塞がれていても、その下は空洞になっているためクラックに沿って塗膜が凹んでしまい、結果として塗装面にミミズ腫れのようなラインが出来てしまうことがあります。
このような症状になると、美観を維持しているとは言えないので、こちらのクラック補修も塗装工事とは別の工程や工事となります。
こちらの内容がお見積書に記載がなかったり「サービスでやっておきます」と言っていた場合は注意が必要になります。
遮熱塗料で塗装をしたかといって、寒冷地域や特別な冷夏でもない限り、真夏のエアコンを完全に使用しないほどの室温上昇を抑えることはできません。
前述にお伝えしたように、抑えられる温度は3℃程度です。実際のところは、『エアコンの稼働時間や稼働日数を少なくする』『エアコンの設定温度を高めにしても涼しくなる』ほどです。
光熱費の削減効果はかなり高いですが、今の技術では室内の温度上昇をゼロにすることは不可能です。
夏場の冷房と冬場の暖房は、断熱塗料であっても、それらの使用をゼロにすることはできません。
断熱塗料を使用すれば、各シーズンの使用を削減できるので、大幅に光熱費の節約にはなりますが、異常気象でもない限り稼働をゼロにすることは出来ません。
建物の外と中の温度差によって結露は発生します。空気中に漂っていた水蒸気が冷やされ液化し、窓などに付着するのが結露になります。
結露は窓ガラスやサッシに発生します。多くの方が経験しているとは思いますが、これはその部分が最も温度差が発生しやすいためです。
窓ガラスやサッシには断熱塗料を塗ることは出来ませんので、どうしても温度差が大きくなるため結露が発生してしまいます。
断熱塗料を塗ると場合によっては、以前よりも温度差が大きくなり、結露がひどくなることもあります。
なので、窓ガラスに塗る断熱材やサッシに結露防止テープを貼りつけるなど、窓ガラスのことも考えた総合的な対策が必要な場合があります。
これらように、遮熱塗料や断熱塗料はその特性に目が行きがちになるため、その効果も大きく伝えれがちになります。
前述でご説明した効果の目安である3℃の温度変化は人により捉え方も異なり、気温や室温により感じ方も大きく変わります。
人によっては「涼しい」、「ちょっと肌寒い」と感じ方もそれぞれいらっしゃるはずです。
営業マンによってはそれを誇張して話す人もいる中で、その言葉をうのみにするのではなく、ご自身で判断する必要があります。