ご自宅の屋根や外壁塗装を行った場合、使用した材料のほとんどには、その状態にはよりますが業者が一定期間の保証を付けてくれます。
保証期間内に「塗装がはがれてきた、ひび割れてきた」など不具合も発生することもあります。その場合、一般的には施工を行った会社が塗り直しなどの補修をしてくれることが多いです。
このような工事に関する保証を「施工保証」と呼ばれています。
この施工保証は、同じ状態の外壁材を同じ塗料で塗ったとしても、施工した業者によってその期間は異なる場合が多いです。ここ数年で人気の塗料であるパーフェクトトップで例えるならば、長い業者の保証期間で12年、短い業者ですと6年程度になります。同じ条件の建物であっても、立地や環境によって傷の傷み具合や状態は異なりますので、保証期間に差が出てしまうのは、仕方のないことになります。
外壁材の張り替えや、屋根の葺き替えを行った場合は、その製品によってはになりますがメーカーが一律の保証をしてもらえます。(中には初期不具合以外の保証がない製品や、保証が付いている製品であっても保証書の発行をしない場合もあります)
しかし、屋根や外壁塗装にはメーカーの保証はほぼありません。
同じ外装リフォームであるのに、塗装と外壁の張り替え、葺き替えでメーカー保証の有無が起こるのかというと、塗装は様々な工程を経て完成することから、管理が必要な項目が複数あるからです。
塗り替え後に、一律の保証をしているメーカーや塗料もありますが、かなり少数になります。
一概に「保証」といっても、外装リフォームにはさまざまな保証があり、より詳しく理解して頂くためには、製品保証、メーカー保証、施工保証(自社保証)それぞれの違いを知っておく必要があります。
前述のように、外壁の張り替えやカバー工法を行った場合、屋根の葺き替え、屋根のカバー工法を行った場合、建材のメーカーは保証をしています。今回はニチハの窯業系サイディングとアイジー工業の金属屋根材の保証を、例として見てみましょう。
ニチハ株式外社は住宅会社様を対象に外壁材(塗装品)に対して【製品本体保証】を実施しています。
■保証対象品: 窯業系外壁材(塗装品)本体および同質出隅
<保証内容 10年>
外壁材本体の割れ、欠損、反り
※割れ:全幅、全厚にわたり割れている状態。ただし、切断、加工した部分を起因とする不具合は除く。
※欠損:一部が欠け損じ、壁体内が見える状態。
※反り: 壁体内が見える、または455mmのスパンに対して矢高が5mm以上の状態
<保証内容 2年>
外壁材本体の亀裂、反り
※亀裂:幅0.2mm、長さ50mmを超えるもの。
※反り: 455mmのスパンに対して矢高が3mm以上5mm未満の状態。
外壁材本体および同質出隅の塗膜の著しい剥離・変褐色(沖縄県は除く)
※著しい剥離・変褐色:施工年数を考慮しても見苦しく、社会通念上、明らかに補修が必要な状態を言います。
■保証期間
外壁施工完了日からの保証にとなります。なお、本保証によって保証が行われた場合でも保証期間の変更はありません。また、保証によって弊社製品が使用された場合でも、これにより新たな保証を実施するものではありません。
※ニチハ窯業系外壁材の保証について.pdfより引用
ここで重要になるのは「住宅会社」様、つまり業者が保証の対象にされているということです。
その建物を所有している施主様ではないので、何らかの不具合が発生した場合、施主様から施工業者に連絡、施工業者が調査を行い、メーカーに連絡となります。
仮に、外壁の交換や張り替えが必要になった場合は、メーカーから施工業者に問題が起きた建材を発送してもらい、その後に補修工事になります。
■製品保証:登録いただいた建築物に対し、保証規定に基づいて保証します。(元請業者様に対して保証を実施しています)
【アイジールーフ】
塗膜15年保証、赤さび20年保証、穴あき25年保証
<保証の対象>
対象商品:スーパーガルテクト、スーパーガルテクトC
<保証期間>
施工完了後より以下の期間とします。但し、本製品が製造日から1年を経過してから施工使用された場合には製造日から以下の期間とします。
・塗膜については15 年間。
・赤さびについては20 年間。
・穴あきについては25 年間。
<保証内容>
保証内容は、次のとおりとします。
・3-1.穴あき
塗膜の劣化や腐食によって、鋼板表面に明らかな穴あきが認められないことを保証します。
・3-2.赤さび
赤さびの発生面積が、全施工面積の5%以下であることを保証します。
・3-3.塗膜のひび、われ、はがれ、ふくれ
2m離れて目視し、塗膜のひび、われ、はがれ、ふくれが著しく目立たないことを保証します。(変褪色を保証するものではありません)
<補償方法>
保証期間中に万一保証内容に抵触するような事態が発生した場合は、その欠陥を生じた製品について状況に応じ、次のような方法で補償します。但し、弊社は保証内容に抵触するか否かの判定権及び以下の方法のうち、その責務を履行するために用いる方法についての決定権を保有するものとします。この補償実施後の保証期間は、2項所定の各期間から補償実施までの経過時間を差し引いた残期間とします。
4-1.塗り替え塗料の支給
4-2.再塗装工事費の負担
4-3.代替製品の支給
4-4.再施工工事費の負担
4-5.その他、前4-1~4以外に保証者が最も最適と判断した方法による補償
※各種技術資料・ダウンロード(製品保証) 塗膜15年保証、
赤さび20年保証、穴あき25年保証より引用
こちらも実際に保証が実施されるのは元請業者様となっているので注意が必要になります。
建材は業者のしっかりとした施工をメーカーの仕様書や説明書を下に行うという信頼関係によって成り立っています。
しかし、屋根・外壁塗装は保証をしていない場合が多いのですが、この理由を日本三大塗料メーカーにお聞きしてみたところ、基本的に戸別住宅の保証は行っておらず、大規模な建物の改修などでは保証をするケースもあるようです。戸建て住宅の保証を行っていない理由としては「各業者の作業や施工の品質管理が難しい」といったことを挙げています。
建物の塗装を請け負う業者は全国に約5万ほど存在すると言われています。
それほどある業者の全てが塗料メーカーの推奨する方法で施工しているとは言い切れません。メーカーが想定している耐用年数どころではなく、その3分の1程度で塗膜に不具合が起きているケースが何度となく起こっているためです。
メーカー保証が付けられないという理由は他にあり、昔から外壁塗装に携わっている業者は「塗料は半製品」だと言われてきました。
塗料は屋根材や外壁材に使われ、塗料が塗られて乾燥し、外壁や屋根が防水性などの本来の健全さを取り戻すことで初めて完成形となるのです。
前述の建材と比較をしてみましょう。
建材はすでにメーカーから出荷される時点で、建築材料と言う意味では完成しています。据え付ける場所によっては加工をせずに取り付ける場合もあります。
それに対し、塗料は現場で使用する前に最初は攪拌します。主剤(塗料)と硬化剤を混ぜる2液型の場合は、その比率を守って混ぜ合わせて、塗らなければいけません。雨が降ってきたとき、塗料が乾く前だと流れてしまいます。
そもそも液体なので、建物の仕上げに使われるものなので、未完成なものになっています。
屋根材、外壁材、塗料どれもメーカーの検査を経て出荷される過程は同じですが、塗料はこの後に仕上げという工程があります。屋根材、外壁材も施工がありますが、塗料に比べると完成度に差は出ません。
塗装は職人の技量により、大きく品質が左右されるのでこのような理由からメーカーにとってそれを保証するのは難しいのです。
全国に建物の塗装を請け負う業者は5万店ほどあると言われています。
仮にこのすべての業者が毎日フル稼働しているとなれば全国に5万カ所の現場があることになりますが、これは現実的な数値ではないのでこれを10分の1で考えましょう。各都道府県で100ずつ現場があるとすれば日本全国で約5000カ所になりますが、この数でもひとつのメーカーが管理するのは無理があります。
メーカー自体が現場の調査などを行うかとお聞きしたところ、大規模な現場に限られるということでした。
メーカーとしての役割は、扱いやすく、耐久性が高い塗料を造ることです。その証明として、各塗料の耐久性や、扱いやすさは年々向上してきています。
最近では扱いやすさ・塗りやすさに着目したレオロジーコントロールの研究も盛んにされています。
このようなことから、技術大国日本を象徴するかのように日本のメーカーが世界シェアのトップ10に2社も入っているのです。
レオロジーコントロールとは、、、
物体の粘土のこと。液体などの場合は温度の変化がなければ、その粘土は言っていと思われがちですが、実はかき混ぜるなどの新たな力や圧力が加わった場合、大きく変化します。
塗料の場合、かき混ぜるなどの力が加わると粘土を下げることが出来ますが、それを止めると粘土がまた上がります。なので、ローラーや刷毛などで塗っているときは粘土が低い状態ですが、外壁などに塗った後は粘土が上がるので、重力以外の力が加わることがない状態だと、外壁から塗料は垂れにくくなっています。
マヨネーズやケチャップも同様の性質を持っていますので、出し過ぎることがあるのは圧力をかけ過ぎることにより、粘土が下がっているためです。
☑湿度の管理
(塗装が不可能となる、85%以上になることはないか)
☑温度の管理(冬場のみ)
(塗装が不可能となる、5℃未満になることはないのか)
☑雨が降る可能性はないのか
☑風の管理
(砂やチリが飛来し、塗装した面い付着することはないのか)
予定した期間の天気予報はもちろんですが、作業当日でも常に天候は変化します。夏場はゲリラ豪雨も発生しますので、常に天気予報などの情報を取得できるようにしています。
☑高圧洗浄後の乾燥時間は充分か
☑重ね塗りを行うに当たって塗料の乾燥時間は充分か
☑養生を剥がしても問題のない時間か
乾燥時間は、塗料によって違いますし、天候によっても変更が必要になりますので、注意が必要なポイントです。また、少ないケースですが重ね塗りをするまでの時間が開きすぎている(7日間前後)と重ね塗りが出来ない塗料もあります。
☑希釈率は守られているのか
☑配合率は守られているのか (2駅型塗料)
☑ポットタイムは守られているのか (2液型塗料)
塗料は配合率の気を配ることが大切で、本来であれば、塗料と硬化剤をしっかりと量を測り配合をしなければいけませんがこの配合を目分量で行う業者もいます。最新の塗料は性能がよくなり、多少配合が違っても不具合が出ることは減りましたが、耐用年数は左右します。
※ポットタイムとは・・・主剤(塗料)と硬化剤を混ぜた後、硬化により塗装が不可能になるまでの時間のことをポットタイムと言います。
天候から各工程の乾燥時間、塗料の管理の仕方についてなど、現場で管理することはとても多く、どれが欠けても品質の高い工事にはなりません。
各塗料の仕様書やマニュアルはメーカーでははっこうしているものの、これらの通りに全てが行われているかを把握することが出来ないのが現状です。
このような状況であることから、メーカーでの保証を行うのは厳しいということはご理解頂けると思います。
現状の屋根・外壁塗装には、施工の際に守らなくてはならないルールがいくつもあり、適切に管理してもらうことが必要です。
塗料はもちろんですが、屋根・外壁塗装の完成には業者の知識や技量任せに頼る部分が大半を占めています。
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